あさりのみそしるダイアリー

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2013年4月から運用が始まる「コンテンツ権利保護専用方式」とその「サイマルクリプト運用」とは一体?

テレビやレコーダー、ないしはチューナーで、最近、「新しいデジタル放送の方式に対応しました」といったようなファームウェアアップデートが見られます。

「新しいデジタル放送の方式に対応しました」とは、一体どういうことなのでしょうか。


ところで、東芝からはこのようなアナウンスが出されています。

〇 「レグザ」ならびに「レグザブルーレイ」ご愛用のお客様へのお知らせ|液晶テレビ|REGZA:東芝〈レグザ〉
http://www.toshiba.co.jp/regza/newsreport/20121017.htm


「コンテンツ権利保護専用方式」とその実施に伴う「サイマルクリプト運用」が上記アナウンスのように一部の機種で不具合を起こしているようです。


もっとも、現在は本運用段階ではなく、今年8月中旬から関東広域で運用を開始し、2013年4月までに全国で運用しましょうということなのですが、はてさてどうなることやら。まだほかにも不具合を起こしそうなケースはあるかもしれませんが、順次解決していってもらいたいところです。

〇 新方式の運用開始について - 一般社団法人 地上放送RMP管理センター
http://www.soumu.go.jp/main_content/000164295.pdf


一体、全国規模でテレビに何が始まろうとしているのでしょうか?


話はカンタンです。

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地上波を始め、現在、コピー制御(暗号化)されて送信されているデジタルテレビ放送の放送波を復号(ルールに基づく暗号解除)するために「B-CASカード」が用いられています。

このカードをテレビやレコーダー、チューナーなどといった受信機に挿入しないと、復号ができず、テレビを視聴することができません。

B-CASカードには、小さな「miniB-CASカード」というものが存在します。私の手持ちの機器にはそれを使うものがないので、実物は見たことがないんですけどね。


〇 各種お手続き[一般向けカード] | B-CAS
http://www.b-cas.co.jp/www/step/index.html


しかし、いずれの手段でもカードが必要であるという点に違いはありません。大きさは違っても、カードそのものとカードにアクセスするカードリーダーが受信機に備わっていなければなりません。

つまり、どんなに受信機が小型化しても、カードとカードリーダーに必要な物理的な空間がどうしても必要になり、小型化の妨げになっているのです。また、カードとカードリーダーの接触不良等の問題もありますし、カードを挿入するスロットの確保もしなければなりません。


この状況を解決するための仕組みがソフトウェア方式のCASシステムです。ソフトウェア方式であれば、カードやカードリーダー部、カードの挿入口は不要になり、さらなる受信機の小型化が期待できます。近年の小型ハードウェアの処理性能は非常に高くなっているからこそ実現できることともいえましょう。

また、ソフトウェア方式では、チューナーさえ搭載されていればどのような機器であれテレビの視聴が可能となるため、ケータイやスマートフォンだけでなく、タブレット、ゲーム機やカーナビなどにチューナーが搭載されていれば、あとはソフトウェアレベルでなんとかなるという話だとも言えます。多様な受信機に対応できるようになるというわけです。
もちろん、これまでにそのような製品がなかったというわけではありませんが、ソフトウェア方式にすることでデバイスに対する要求が小さくなるため、デジタルテレビ放送の受信機としての利用の敷居が下がるという話なのでしょう。


加えて、現在、デジタルテレビ放送の復号にはB-CASカードを使用する以外の選択肢はありません。B-CASカードの管理や運用は、NHKや民放系BS局などが出資する「株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ」が行っています。この会社は一般企業であり、現在、デジタルテレビ放送の復号方式において一社独占という状態であり、独占禁止法の観点から問題視されてきました。

しかし、ソフトウェア方式による新しい復号の仕組みを導入することで、復号方式における選択肢を増やし、現行の一社独占状態を解消しようというのが、NHKや在京民放キー局からなる「一般社団法人地上放送RMP管理センター」という組織です。

これにより、デジタルテレビ放送の復号方式における一社独占状態は事実上解消することになります。ここにさらに他の新規事業者が名乗りを上げることは難しいでしょう。暗号化は放送局が送出前に行う処理であり、放送局の協力なしには実現することはできません。もっとも、広く使われる技術ゆえに多くの事業者が参入したところで復号方式の市場が混乱し、手持ちの受信機が何の方式に対応しているのかを確認しなければならないなど面倒ごとになるだけでもありますから、こういう市場は増えすぎても問題なんですけどね。一社独占状態だった頃よりはマシだという程度ですが、客観的にみればあまり変わっていない気もしないでもありません。


さて、受信機の小型化や多様な機器へのテレビ受信機能の付加などに役立つソフトウェア方式ならびに、現在の市場の一社独占状態を解消するための新組織設立のために運用が開始される新しいコンテンツ保護方式ですが、この新しいコンテンツ保護方式を「コンテンツ権利保護専用方式」と言います。


〇 コンテンツ権利保護専用方式とは|一般社団法人地上放送RMP管理センター
http://www.trmp.or.jp/new_method/


「コンテンツ権利保護専用方式」は、基本的にB-CASカードがやっていることをソフトウェアで実装したものであり、その仕組みに大きな違いはありません。しかし、B-CASカードと同一のルールで運用できるものではないため、運用開始以降のデジタルテレビ放送では、既存の「B-CASカード方式による復号化」方法と新しく運用される「コンテンツ権利保護専用方式による復号化」方法が共存する形になります。

デジタル化を機に日本中に普及させたB-CASカード方式を用いる受信機を今後も使用できるようでなければ大問題であるため「B-CASカード方式による復号化」の運用は今後も継続され、加えて2013年4月以降に順次リリースされるであろうソフトウェア方式による復号化機能を備えた受信機に適用できるよう「コンテンツ権利保護専用方式による復号化」方法にも対応できるようにしましょうということです。

この異なる2つの、放送局での暗号化ならびに受信機での復号化を同時に行う運用を「サイマルクリプト運用」と言います。ただし、このサイマルクリプト運用がトリガーとなり不具合を発症するケースが冒頭のそれです。




今回の「サイマルクリプト運用」による新しい「コンテンツ権利保護専用方式」ですが、新しく誕生するであろう受信機の幅を広げる一方で、既存の受信機に障害をもたらす危険性も秘めています。メーカーはファームウェアアップデートにより対応を行っていますが、ファームウェアアップデートを行わなかった場合の動作は保証できません。もし万が一不具合が発生したとしたら「サイマルクリプト運用による不具合かもしれない」という可能性を頭の片隅にでも置いておけば、もしかしたらメーカーの不具合対応で役に立つかもしれません。

視聴者がこれを意識してすべきことは特にありませんが、手持ちの受信機の新しいファームウェアが提供された場合、通常であれば自動的に適用されますが、手動でアップデートする必要がある場合には、将来受信機に不具合が起こらないようにする(起こる可能性を小さくする)という点を考え、なるべくアップデートするようにしましょう。

また、今回の「コンテンツ権利保護専用方式」による運用が開始されたとしても、B-CASカードを用いている受信機では引き続きB-CASカードが必要ですので、抜いたり捨てたりしないでください。「コンテンツ権利保護専用方式」はあくまでこの方式に対応した受信機でのみ運用できる新しいルールです。

それと、「コンテンツ権利保護専用方式」は地上デジタルテレビ放送のみに適用されます。BSやCSについては、受信契約時に必要な限定受信(CA)の機能をもつB-CASカードを用いた方が効率がいいのです。